相模湾

相模湾(深海)

組織

独立法人海洋研究開発機構 海洋生物多様性研究分野

研究テーマ

相模湾深海域の生物多様性と環境

サイト概要

1.背景

相模湾は,本州中央部太平洋側に位置する(Fig. 1).伊豆半島と 房総半島に挟まれ面積は約2,450 km2となる.幅は東西方向に約55 km,南北方向に約60 kmとなる.湾口は大島を境にして東西に区分 され,湾口東側には最大水深1900mに達する相模トラフがある.南 から流れ込んだ黒潮は七島硫黄島海嶺上を主に東側に,その支流が 相模湾内に流れ込む.栄養塩は,2-4月の植物プランクトンの大増 殖に伴い減少する.プランクトンの大増殖は,東京湾からの栄養塩 の供給で7-8月にも起こる.

深海生態系は地球の生態系の重要な部分と思われる.なぜなら,深 海生態系は広大な領域を占め全球的な物質循環で重要な役割を果た していると思われる.例えば深海底に沈降する粒子は,堆積した後 にベントスの活動により,堆積物と海水の物質循環が促される.し かしながら,深海生態系に関する我々の知識はあまりにも限られて いる.そこで, 我々は相模湾を対象に深海生態系の長期モニタリ ングを試みている.

相模湾中央部を南北に走る相模トラフは,テクトニックに活動的な 場でフィリピン海プレートと北米プレートが収斂している.そのた めに海底下からメタンが湧き出し,湧水生物群集といった化学合成 生態系が形成される(Fig. 2).1984年に初島沖に湧水生物群集が 発見されて以来,年に10数回潜水調査船などによって生物・環境の データを取得してきている.また,人為的に鯨遺骸を沈め,そこに 形成される鯨骨生物群集の遷移を年に数回観察している(Fig. 3) .相模湾中央部は東京海底谷から盛んに物質が供給され,人間活動 による深海生態系への影響を見やすい場所である.我々は湾中央部 に定点観測点OBB2を設定し,環境や底生動物の活動を定期的に観測 している(Fig. 4).中・深層生態系においては,高いバイオマス や種多様性が認められている.つまり相模湾の深海域は,光合成生 態系と化学合成生態系を同時に観測でき深海生態系研究に有利な条 件を備えている.

2.対象生態系と位置

2-1. 深海化学合成生態系

2-1-1. 湧水生物群集(メタン湧水域)(Fig. 1, 2)

初島沖サイト. 35°00.14’-00.94’N, 139°13.37’-13.48’E, 水深 800-1200m.

2-1-2. 鯨骨生物群集(Fig. 1, 3)

初島沖北東サイト. 35°04.94’N, 139°13.37’-12.98’E, 水深918m.

2-2. 深海光合成生態系

2-2-1. 中・深層生物群集

初島沖サイトとOBB2上の水塊.表層から海底まで.

2-2-2. 深海底生物群集(Fig. 1, 4)

湾中央部 OBB2サイト, 35°00.83’N, 139°21.64’E, 水深1455m.

3.長期観測

湧水生物群集初島沖サイト(水深1177m)には長期観測ステーショ ンが設置されている(Fig. 5).これは世界初の深海長期観測モニ タリング装置である.このステーションには,TVカメラ,CTD, ADCP,地震計などが装備されており,海底ケーブルを介してリアル タイムでデータが伝送されている.このステーションは1993年から 観測を開始し,2000年に新システムに入れ替え現在も観測中である .

Fig. 1. 相模湾深海域のモニタリング観測点. ●初島沖サイト(メ タン湧水生物群集)および初島沖北東サイト(鯨骨生物群集), ● 湾中央部定点観測点OBB2.

Fig. 2. 初島沖サイトの湧水生物群集.シロウリガイ類(二枚貝 )などが高密度に生息.

Fig. 3. 初島沖北東サイトの鯨骨生物群集.

Fig. 4. 湾中央部定点観測点OBB2での集中観測.

Fig. 5. 初島沖サイトにおける長期観測ステーション.

連絡先

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